東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

Language and Information Sciences, University of Tokyo

東京大学大学院総合文化研究科

言語情報科学専攻

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言語情報科学分科案内

超域文化科学科「言語情報科学分科」の発足について

平成10年度に教養学部後期課程の「超域文化科学科」のなかに、新しい分科「言語情報科学分科」が発足しました。「20世紀は言語の世紀であった」といわれるように、現代の知は、人間の精神の活動や文化の中心にある、言語・記号・情報の理解なしには成立しません。「言語情報科学分科」は、言語学の新しい分野や、記号論、精神分析、テクスト理論といった人間諸科学の新しい領域、コミュニケーション科学やメディア情報理論など、二十世紀に発達した最新の知の成果を大学教育にとりいれることによって、二十一世紀の多元言語生活、文化複合状況、情報メディア社会を創造的に生きる新しい世代の人材を育成するために設置されました。

教育の理念と目標

「言語情報科学分科」が、教養学部後期課程の教育研究の目標として掲げる理念は次のようなものです。

<ボーダーレス化した世界における高度な文化理解能力の育成>

国境が相対化され、言葉と文化を異にする多くの人々が交通する今日の地球に生じている様々な国際文化問題、文化複合の問題、文化の共生の問題、文化間コミュニケーションの問題などを、総合的に理解し研究する能力を育てます。

<人間の意味活動を理論的に解明する新しい型の分析能力の開発>

人間の文化・社会・個人を成立させている言葉・記号・情報・メディア・コミュニケーション活動などを、人間が自分たちの生活を意味の世界として生み出す活動―つまり、<意味活動>一般―としてとらえ、それらの意味活動を解明することを可能にする知のパラダイム(言語学、記号論、精神分析、テクスト理論、メディア論など)を体系的に学ぶことで分析的な理解力を培います。

<マルチリンガルな外国語能力の獲得>

国際的な文化複合時代に対応しうるように、二つ以上の実践的な外国語の能力を養い、マルチリンガルな発信型の外国語能力を育てます。

<総合的な電子メディアリテラシーの獲得>

電子メディア時代に対応して、電子メディアを単にツールとしてだけでなく、人間の知覚・認知や文化・社会の次元として理解し実践しうる総合的な電子メディアリテラシーを育成します。

教育と研究指導

「言語情報科学分科」の教育と研究指導は、教養学部後期課程「超域文化科学科」の他の諸分科や、後期課程の他の諸学科との関連のもとに、あるいは、大学院総合文化研究科の「言語情報科学専攻」とも密接に連携しながら、分科科目による体系的なカリキュラムの履修と、教員によるきめ細かい個人指導によって進められます。

<理論研究教育>

理論言語学、応用言語学から、記号論、メディア論、精神分析、テクスト理論や文学理論、さらに文化理論や異文化コミュニケーション論にいたる、多様なディシプリンを代表する専門研究者を教授陣に、五学期をとおした体系的なカリキュラムの履修によって理論研究教育を行います。教養学部の前期教育科目との関連でいえば、総合科目の「言語科学」、「言語生態論」、「記号論」、「翻訳論」、「テクスト分析」などの延長上で、より専門化した本格的な基礎理論を学ぶことになります。学生の関心領域に応じて、理論研究の進め方を教員が指導します。

<分析研究教育>

理論研究は、具体的な言語現象、文化現象、記号現象、文学テクストを分析する作業をともなってはじめて、真の研究能力として身につくものです。言語情報科学分科のカリキュラムでは、実際に様々な言語現象・文化メディア現象を素材に、実践的にそれらを分析する方法の習得に力点がおかれます。外国語教育や情報処理教育で得た実践的能力を生かし、教員の指導のもと、演習科目を中心に分析や解析の指導がおこなわれます。

<外国語教育>

言語情報科学分科では「マルチリンガルな発信型外国語力」を身につけることを教育の一つの柱として重視します。今日の国際化社会においては、卒業後就職して社会に出るにせよ、研究・教育の場に進むにせよ、きちんとした外国語の能力が必須のものとなると考えるからです。教授陣には英語・ドイツ語・フランス語・中国語(広東語を含む)・ロシア語・スペイン語・韓国朝鮮語・外国語としての日本語の専門家がおり、学生の多様なニーズに応えられる陣容となっています。また、国際コミュニケーション関係の分科科目は、他者理解を基盤とする真の意味でのコミュニケーションについて考え学ぶ目的で開講されるものです。

<情報科学教育>

自然言語教育としての実践的な外国語教育とともに重視されるのは、新しい電子メディア時代に対応する実践的な情報科学教育です。言語情報科学分科には、コンピュータ関連の部屋として、18号館1階に情報解析室を設けています。情報解析室にはWindowsマシンが20台、Macintoshが2台備えられており、さらにそれらを通じて UNIXマシンを利用することができます。欧文・和文の読み取り機能(OCR)を持つスキャナも利用できます。さらに各種のCD-ROMが資料として揃っています。また、18号館3階には音声データの収集・分析のためのサウンドラボを設けています。サウンドラボには防音ブースが2つ備わっており、精度の高い録音が可能です。言語情報科学分科に所属する学生は、大学院総合文化研究科の言語情報科学専攻が独自に立ち上げているサーバーにアカウントを取得し、それらの施設を自由に使用することが出来ます。コンピュータに関連して、可能な研究分野としては、大規模な言語データベースから言語の様態を抽象・記述するコーパス言語学、テキスト理解技術等の自然言語処理研究、統計的な手法を用いた文学テクストの研究などが考えられます。そして、このような研究の基礎となるべき、コンピュータ言語(C, AWK, Perl, Prolog, Lisp)などの基本を習得するための教育を受け、その知識・技術を前提として、既成の検索ソフトなどに頼ることなく、研究の必要に応じた独自のプログラムを組むことが出来るようになります。言語情報科学分科では、とくにファイルや文字列の処理に関してコンピュータ(UNIX環境)を駆使するための、高度な技術を養成するための授業を開設しています。

<卒業論文の制作>

実践的な外国語教育の重視は、言語情報科学分科の専門教育と密接な関係に立って行われます。理論研究教育・分析研究教育で培われた専門教育の知識を生かすには、すぐれた外国語能力と情報処理能力が基盤として必須であり、他方また、言語情報科学の専門教育が正しい意味での外国語能力の獲得や電子メディアリテラシーの発揮に果たす役割も大きいものです。このように、本分科では専門教育と外国語教育・情報教育とを表裏一体のものとしてとらえ、実践していきます。そのような分科における教育研究の集大成が、卒業研究と卒業論文の制作です。学生は、第3学年度の後期から、教員スタッフと密接な相談のうえ、理論・分析研究教育のメニューを決めた上で、卒業研究のテーマを絞りこんでいきます。卒業論文は、分科での外国語教育の仕上げという意味も含め、できるだけ、その研究テーマにみあった外国語で執筆することが期待されています。