東京大学大学院総合文化研究科
言語情報科学専攻
Language and Information Sciences, University of Tokyo
日本語とドイツ語のあいだに「詩的な峡谷」を見出しながら創作を続けている作家・ 多和田葉子さんをお迎えし、文学の言葉と、ジェンダー、セクシュアリティがどのよう に関連するのかについて話しあいたいと思います。
多和田さんは、これまでも、『容疑者の夜行列車』(2002)、『旅をする裸の眼』(200 4)など、女性たちが母語の外へと旅する小説を多く書いています。また、近年では、『 尼僧とキューピッドの弓』(2010)、『雪の練習生』(2011)など、女性たちが「自らの物 語=自伝」を語るために新たな人々の結びつきを模 索する小説をたくさん発表しています。
本シンポジウムにおいては、文学研究や批評、創作を行う人々の参加をえて、ジェン ダー、セクシュアリティという視座から文学テクストへとアプローチし、多和田文学の 読みをめぐる新たな展開や枠組みを構築したいと考えています。
1960年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルグ大学修士課程、チュー リッヒ大学博士課程修了。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語の2言語で作 品を発表している。1991年、「かかとを失くして」で群像新人文学賞受賞。1993年、「 犬婿入り」で芥川賞受賞。1996年シャミッソー賞、2005年ゲーテメダル受賞。代表作に 『犬婿入り』(講談社)、『容疑者の夜行列車』(青土社)、『雪の練習生』(新潮社)、『 雲をつかむ話』(講談社)など多数。